『百億の魔女語り』１巻の感想レビュー（ライトノベル）

ファミ通文庫のラノベ、『百億の魔女語り(1)　オトコが魔女になれるわけないでしょ。』（竹岡葉月先生原作、中山みゆき先生イラスト）が発売中です。

表紙はヒロインの魔女エーマをメインに、主人公のアルトがこき使われている一幕。
綺麗なピンク色の縞パン…もとい、あかがね色の髪と優しげな表情のエーマが印象的ですね。

お話的には、現代に似つつも日常的に魔術が使用されるようになった世界で、魔術学院の卒業証書を手に入れるため、スポーツは得意ながら勉強は苦手な主人公のアルトが、卒業実地研修を受けることに…という展開です。
ただ、男のアルトですが、その実地先で学ぶのは『魔女術（ウィッチクラフト）』だった！というわけで、ファンタジー×女装美男子×ボーイ・ミーツ・ガールモノラブコメ展開な仕上がりです。
ある意味、サブタイトル通りの内容とも言えますが、女装はつかみの部分だけなのでご安心をｗ

体育会系のアルトが、単位のために必死に課題をこなそうと、不慣れな土地でもめげずに頑張る姿が健気で微笑ましいです。
女と偽ってまで研修に来た彼ですが、あっさりバレながらも三者三用に魅力的な魔女達と友好を深めていって…と、無事に課程を修められるよう応援したくなってくる感じですね。

しかし、そんな彼ですら疑問を抱かざるを得ないような課題と、遅々として進行しない実情に追い込まれることで、焦りと苦悩は増すばかり。
まじめに取り組んでいる人に限って、こういう壁にぶち当たった時の不安もひとしおでしょうから、やたらと説得力がありました。
自分が昔、学校から現地実習に行っていたときは、もっと単純にめんどくさいな〜ぐらいにしか思っていなかったので、余計そう感じられたのかもｗ

心の隙を突くかの様に、とある選択を課せられるアルトが、このまま最後まで実習を続けるのかどうか？というのが大きな見どころ。
選択肢があるとは言え、展開的に無難な方向でまとめるだろうとは思っていましたが、すれ違いを続けていたエーマの胸中の想いがしっかりと描かれ、説得力の高い心温まるやりとりが好印象でした。

終盤は、そこまで小出しにされていた伏線を回収しつつ、より大きな世界観を提示しながらクライマックスへと向かっていく展開だったので、基本的には『ああ〜、なるほどなぁ』という感じでした。
意外というよりは、新事実が後出しでフェアじゃないなという部分もありましたが、それぞれがそれぞれの事情や集団の中で生活を送っている以上、ぶつかり合う場面も出てくるのは当然ですし、ファンタジーの世界の中に、あえて群集心理や経済的な利権絡みの事情を組み込んで見せるという手法自体も、魔女と社会との軋轢というか、魔女裁判的な効果を生んでいて良かったと思います。

で、むしろクライマックスのあとのエピローグ部分における種明かしこそが本作最大の見所だった件。
これはネタバレになるので言えませんが、上手く最後まで引っ張ってきていたので凄かったです。
ヒントはありましたが、冒頭から良い意味で騙されていたというわけで、お見事でした。
カラー口絵の最後のイラスト、そういう意味だったのねとｗ

手紙演出だけでもかなり鳥肌モノでしたが、更にシリアスな引きが仕込まれていたので、２巻が待ち遠しいです。
ただ、個人的には『理由がある嘘』に対してとはいえ、みんなちょっと寛容すぎるかなという気がしないでもなかったり。
２巻以降の続刊が前提という都合上、本巻では魔術関連の世界設定を説明するために多くが割かれているため、ヒロインズについてもキャラ紹介がメインだった気がします。
なので、エーマがアルト本人に惹かれたというよりは、状況が重なってちょっとイイ雰囲気になった！ぐらいの軽い感じが目立ったかも。
中盤のエーマの心情吐露場面が良かっただけに、逆にショックを受けてしまいそうな気がしたのですが。
むしろ最大の純愛ヒロインとなりそうなのは、実妹のアディリシアじゃないかと期待してみたりｗ

パンチラ、全裸、ハグ、乳、泣き顔と、萌え〜なシチュエーションを描いたイラストの数々はクオリティが高く、今後のサービスカットが楽しみです。
SDキャラや、美少年キャラも上手く描いていってくれそうなので、女性読者にも受けが良さそうな気がします。

気になった方は是非、チェックなさってみてくださいませ。

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