スーパーダッシュ文庫のラノベ、『ニーナとうさぎと魔法の戦車』(兎月竜之介先生原作、BUNBUN先生イラスト)が発売中です。
第9回SD小説新人賞大賞受賞作品ということで、注目されていた方も多いのではないでしょうか?
表紙には、主人公にしてヒロインである12歳の少女ニーナと、彼女が身を寄せることになる私立戦車隊、通称『“首なし”ラビッツ』の戦車長ドロシーのふたりが登場。
生き生きとした表情が魅力的ですが、ニーナとドロシー他ラビッツのメンバーたちがどの様に絆を深めていくのか?は本作の大きな見所だと思います。
とりあえず、オリジナル軍服がスカートでひゃっほいw
お話的には、戦災によって当てもなくさまよい続けていた元戦車乗りのニーナが、ひょんなことからラビッツと知り合い、仮の砲手としてメンバーに加わることに…という展開です。
ボーイ・ミーツ・ガールではなく、ガール・ミーツ・ガールというワケですね。
ラブコメではなく戦場モノですが、見方によっては百合っぽいシチュエーションやセリフ、イラストが豊富に用意されているので、ソッチ系の美少女モノも好き!という方には特にオススメかと。
無骨な戦車と女性兵士という組み合わせは、基本的にミスマッチなイメージっぽく感じられますが、ニーナ達が乗り込むのは魔法の力を利用した魔導戦車であり、魔女として戦車を操れるのはほとんどの場合女性のみである、という設定になっているのが大きなポイント。
というか、アニメやゲームなどで女性が兵士になって戦う作品も増えてきていますが、本作では、戦車を動かすためにはコード付きのマウスピースを咥えて魔力を魔法板に送る必要があり、負担をおして力を使いすぎると生命の危険も…という感じで、上手く『リスクあり』の設定を盛りこみ、オリジナリティを出すことに成功しています。
戦車長・砲手・操縦手・動力手・(魔法板の)接続手という5人のチームワークが揃って初めて、戦車の性能を最大限に発揮できるというわけですね。
物語の起承転結がしっかりとしているので読みやすいのが好印象でした。
最初は心に大きな喪失感を抱いているニーナが、ラビッツとの出会いで希望を見出し、おだやかな日常のやりとりで癒されながらも、戦闘の現実を見て傷付き、苦悩の末に答えを見つけ出す…という、心の成長(あとがきによれば『欠損の回復』)を軸としたストーリーラインは王道で、説得力が高かったです。
自問自答をし続けてきたニーナが、クライマックス部分で真っ向から熱く啖呵を切るシーンは、本作のテーマが見事に収束した名場面だと言えるかと。
イラスト付きでビシィッ!と決まった感があり、とにかく素晴らしい!の一言に尽きました。
また、魔力爆弾という超兵器がもたらした副作用として、戦車が野良化して人々を襲ったり、パーツの残骸を喰らって大きくなるという、RPGのモンスターチックな設定も興味深かったです。
戦争で戦車戦なら、普通は人間同士の殺し合いがメインで描かれることが多いところですが、ニーナの求める結論を描くためにはむしろ不必要な要素でもあったと思いますし、人間の常識を超える強大な敵キャラを倒す、というカタルシス感も得られて一石二鳥だったかと。
ラビッツのメンバー達は、ニーナが来る前から一緒に戦ってきた戦友だったということもありますが、キャラ同士の関係性がしっかりと感じられるセリフ回しや行動パターンが丁寧に描かれており、それぞれのらしさがしっかりと出ていたのも良かったです。
彼女たちをまとめるドロシーを中心に、一蓮托生となったヒロイン達が、絶体絶命の窮地を切り抜けようと必死になる姿が胸熱でした。
男の子が主人公なら、もっとラブコメ成分がキーになる部分が大きくなったりしていたところでしょうが、全員が女の子ということで、それとは違った純粋な絆がクローズアップされた感がありました。
続刊があるなら、過去の経緯についても細かな掘り下げが出来ると思いますし、是非読んでみたいところですね。
ひとりひとりの過去についても端的に語られていたので、その分感情移入出来たこともプラスになっていたかと。
ニーナが間違った答えに縋りそうになったとき、子を諭す親の様に語りかけるドロシーと、それを見守るラビッツのメンバー達…という場面は感動的でしたし、そのやりとりがあったからこそ、真の意味で戦友、あるいは家族となれたと言っても過言ではないかと。
そこを受けてのエピローグも、とても綺麗な締め方で良かったです。
周囲の人々に助けられながらも、ニーナ自身が自分で答えを探し、見つけていく姿がひたむきで力強かったです。
兵器×魔法×美少女という組み合わせ自体が個人的に好みだったこともありますが、テーマの一貫性、キャラ立て、会話のやりとりの面白さ、世界観設定、文章力ともに完成度が高く、サービスシーンでのアピールの上手さも含めて、デビューしたばかりの新人さんとは思えない安定感だったのでオススメです。
気になった方は是非、チェックなさってみてくださいませ。
![ブログランキング・にほんブログ村へ]()
にほんブログ村
![blogram投票ボタン]()
http://mykaze.sakura.ne.jp/mt/mt-tb-sylph.cgi/10646
第9回SD小説新人賞大賞受賞作品ということで、注目されていた方も多いのではないでしょうか?
表紙には、主人公にしてヒロインである12歳の少女ニーナと、彼女が身を寄せることになる私立戦車隊、通称『“首なし”ラビッツ』の戦車長ドロシーのふたりが登場。
生き生きとした表情が魅力的ですが、ニーナとドロシー他ラビッツのメンバーたちがどの様に絆を深めていくのか?は本作の大きな見所だと思います。
とりあえず、オリジナル軍服がスカートでひゃっほいw
お話的には、戦災によって当てもなくさまよい続けていた元戦車乗りのニーナが、ひょんなことからラビッツと知り合い、仮の砲手としてメンバーに加わることに…という展開です。
ボーイ・ミーツ・ガールではなく、ガール・ミーツ・ガールというワケですね。
ラブコメではなく戦場モノですが、見方によっては百合っぽいシチュエーションやセリフ、イラストが豊富に用意されているので、ソッチ系の美少女モノも好き!という方には特にオススメかと。
無骨な戦車と女性兵士という組み合わせは、基本的にミスマッチなイメージっぽく感じられますが、ニーナ達が乗り込むのは魔法の力を利用した魔導戦車であり、魔女として戦車を操れるのはほとんどの場合女性のみである、という設定になっているのが大きなポイント。
というか、アニメやゲームなどで女性が兵士になって戦う作品も増えてきていますが、本作では、戦車を動かすためにはコード付きのマウスピースを咥えて魔力を魔法板に送る必要があり、負担をおして力を使いすぎると生命の危険も…という感じで、上手く『リスクあり』の設定を盛りこみ、オリジナリティを出すことに成功しています。
戦車長・砲手・操縦手・動力手・(魔法板の)接続手という5人のチームワークが揃って初めて、戦車の性能を最大限に発揮できるというわけですね。
物語の起承転結がしっかりとしているので読みやすいのが好印象でした。
最初は心に大きな喪失感を抱いているニーナが、ラビッツとの出会いで希望を見出し、おだやかな日常のやりとりで癒されながらも、戦闘の現実を見て傷付き、苦悩の末に答えを見つけ出す…という、心の成長(あとがきによれば『欠損の回復』)を軸としたストーリーラインは王道で、説得力が高かったです。
自問自答をし続けてきたニーナが、クライマックス部分で真っ向から熱く啖呵を切るシーンは、本作のテーマが見事に収束した名場面だと言えるかと。
イラスト付きでビシィッ!と決まった感があり、とにかく素晴らしい!の一言に尽きました。
また、魔力爆弾という超兵器がもたらした副作用として、戦車が野良化して人々を襲ったり、パーツの残骸を喰らって大きくなるという、RPGのモンスターチックな設定も興味深かったです。
戦争で戦車戦なら、普通は人間同士の殺し合いがメインで描かれることが多いところですが、ニーナの求める結論を描くためにはむしろ不必要な要素でもあったと思いますし、人間の常識を超える強大な敵キャラを倒す、というカタルシス感も得られて一石二鳥だったかと。
ラビッツのメンバー達は、ニーナが来る前から一緒に戦ってきた戦友だったということもありますが、キャラ同士の関係性がしっかりと感じられるセリフ回しや行動パターンが丁寧に描かれており、それぞれのらしさがしっかりと出ていたのも良かったです。
彼女たちをまとめるドロシーを中心に、一蓮托生となったヒロイン達が、絶体絶命の窮地を切り抜けようと必死になる姿が胸熱でした。
男の子が主人公なら、もっとラブコメ成分がキーになる部分が大きくなったりしていたところでしょうが、全員が女の子ということで、それとは違った純粋な絆がクローズアップされた感がありました。
続刊があるなら、過去の経緯についても細かな掘り下げが出来ると思いますし、是非読んでみたいところですね。
ひとりひとりの過去についても端的に語られていたので、その分感情移入出来たこともプラスになっていたかと。
ニーナが間違った答えに縋りそうになったとき、子を諭す親の様に語りかけるドロシーと、それを見守るラビッツのメンバー達…という場面は感動的でしたし、そのやりとりがあったからこそ、真の意味で戦友、あるいは家族となれたと言っても過言ではないかと。
そこを受けてのエピローグも、とても綺麗な締め方で良かったです。
周囲の人々に助けられながらも、ニーナ自身が自分で答えを探し、見つけていく姿がひたむきで力強かったです。
兵器×魔法×美少女という組み合わせ自体が個人的に好みだったこともありますが、テーマの一貫性、キャラ立て、会話のやりとりの面白さ、世界観設定、文章力ともに完成度が高く、サービスシーンでのアピールの上手さも含めて、デビューしたばかりの新人さんとは思えない安定感だったのでオススメです。
気になった方は是非、チェックなさってみてくださいませ。

にほんブログ村

http://mykaze.sakura.ne.jp/mt/mt-tb-sylph.cgi/10646